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インタビュー びっくりポンのジャンク販売 ジャンクは商売の原点 共立電子産業代表取締役会長 蘇建源 第7回

◆再びジャンクに話しを戻す。
 「ジャンクは屑です。それを生かしてきたのが共立の原点です」
共立電子産業の蘇建源会長は常々そのように言ってきた。
 その屑の中から光る玉を見つけ出して付加価値を付け、長期間に渡って販売することによって、売上を伸ばしてきたのである。

 屑の山から美味しそうなものだけを持ってきて売るのは誰でも出来るが、見るからに屑を売れる商品にするのは、かなりの目利き力が必要である。蘇さんは「今どきいいジャンクなんてそう滅多にあるもんじゃない。よほど目利きが効かないと売れるものは見つけられない。しかも買ってきたものに付加価値を付けることで10倍、20倍、30倍になって売れる」と、ジャンクの醍醐味を話す。
 ジャンクは100円で仕入れたものであっても、1000円にでも2000円にもなる。

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シリコンハウスの店舗にはデジットの表示が

 世の中にないものを販売するのだから、買う人も喜んで買ってくれる。しかもどこへいっても競合するものがない。もしあったとしても、元はジャンクだから共立では安く売れる。そうして利益を得ることで経営面でもゆとりが出来る。共立電子産業が創業時から進めてきた商法だ。


 ジャンクの世界も変化してきた。
 コンデンサやトランスといった旧来からの商品とともに、世の中の半導体化が急速に進むに伴って、ICのジャンクが出回り始めるようになってきたからである。

 ところが蘇さんはICジャンク品の扱いにはノーと言ったのである。
 「ICは非常に複雑な回路を構成をしている商品ですから壊れても分かりにくい。ジャンクと言えどもは信頼性が第一だから、ICのジャンクを販売するのは危険なんです」しかも部品業界では、半導体からそれを集積したICへと変わろうとしていた。そんな中で「いつまでもジャンクばかりを販売していたのでは店を伸ばすことはできない」と判断した蘇さんは、ジャンクとICなどの店舗を別けるが、それはすでに触れた通りである。


 大阪・日本橋の部品販売会社はジャンク販売からスタートしたところも少なくない。
「同じように付加価値販売や扱い商品などを経て今日に至っているケースもあり、ジャンクは決して下の商品と位置付けられない」
 蘇さんは大学で機械を専攻している。謂わば部品を販売するのは門外漢であった。それが資金も何も持たずに部品の商売を始めるには、ひと皮むいたら美味しいものが出てくるジャンク販売は、まさに起業する格好の材料だったわけだ。


 ジャンクだけに限らないが、客が喜ぶ商品情報を商品に付けることで付加価値を高くすると良く売れる。今に続く共立電子産業の商売の基本である。
 トランスには電源トランスもあればオーディオに用いる出力トランスもある。それぞれ自ずと電力・電圧出力は違ってくる。そうしたことも教えるのは、ジャンク販売での接客では欠かせない。それが付加価値として、屑みたいなジャンク品が高い値段を付けることができるからだ。
 時にはジャンクに回路図まで付けて販売することもある。回路図にはトランジスターなどほかの部品まで型番入りで書き込んである。それが周辺の部品も付随して売れることになることがあるからだ。

 ガレージメーカー、日本風に言えば四畳半メーカーでは注文を受けた商品を作るのに、いちいち金型を作っていられない。ジャンク屋で代用できる商品を探すケースもある。
 そんな客が共立電子産業にはたくさんやって来た。今も来る。
 「ライターをカチッと押したら火花が飛びますが、その点火に用いられるのが圧電素子という部品です。ある時、その部品の新品ジャンクが箱入りで出たことがありました。それを販売する店では危険品扱いして持て余していたものを全部買ってきました。<近づけて用いるとICが壊れます>と但し書きして並べたんです。ところが飛ぶように売れた。中にはICが壊れることを逆手にとる想像も付かない利用を考えた人たちもあった」
 過去の話ではあるがこれも付加価値情報のとつであり、客がおもしろがる商品は売れるという一例でもある。

 このようにジャンクを売って利益を上げるのは、ひと工夫もふた工夫も必要で、ほかのどの部品よりも販売するのは難しいかもしれない。
 ICを売るためにジャンクをシリコンハウスからデジットへと移した。蘇さんは「そこでも私が教えた高付加価値販売を受け継いでくれており、マニアにとっては<おもしろい>と評判を高めている」といい、何が飛び出すか分からない「びっくりポン」のジャンク店を一般部品を販売する店舗から分離した一応の成果を得ているようである。


 

 

 

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