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大阪・日本橋    トラム導入の経済効果で研修会  大阪市立大学長尾謙吉教授ゼミの学生が調査報告

◆誰でも気軽に乗ることが出来て、外の景色を楽しめるエレベーターのようにトラムは地面を行く「水平エレベーター」である。大阪・日本橋阪堺線を難波まで延伸させて日本橋にトラムを走らせようとようと提案している「日本橋にトラムを通して賑わいを進める会」(蘇建源代表)が、2016年1月14日、大阪市浪速区日本橋筋商店街振興組合の会議室で開いたトラム研修会「LRT(トラム)とまちづくり 大阪ミナミの未来」で、大阪市立大学経済学部の長尾謙吉教授のゼミ学生9人がトラム導入に伴う経済効果を発表した。トラムを水平エレベーターにたとえる彼らは、トラムをゆっくりと街歩きを楽しむ新交通システムとして、観光客から1日ひとり11円以上の経済効果が必要といった日本橋トラム計画の課題も指摘した。

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大阪・日本橋へのトラム導入の経済効果を説明する大阪市立大学の学生たち 

 自動車中心の社会から脱却したいという風潮が高まり、欧米を中心に注目されているトラムとは一体どういったものなのかー。学生たちはそんなところから話を始めた。

 トラムは他の交通機関と違って誰もが利用しやすい交通機関であり、他の交通機関との乗り換えの連続性があるのも特徴。国内で唯一トラムが走る街である富山市でもトラムによる効果などについて彼らは現地調査を行っている。
 調査した富山市は市民アンケートで「トラム建設を評価する」と答えた人たちが80パーセントを超えていた。これについては「富山市全体の向上にトラムが貢献していることを認めていると認められる」と評価した。


 新交通システムのトラムは建設費や利用料がバス、地下鉄と比べて安いことや、環境に配慮している点のほか「自動車を徐々に排除して、人が歩いて楽しめるために街を活性化させるコンパクトシテイ作りに役立つ」など長所も指摘した。

 トラム導入の目的は「富山市福祉目的であったが、大阪の場合は観光が目的」であり、その大阪においては、天王寺からいずれも年間100万人の観光客が訪れているという天王寺動物園、新世界を経由して、日本橋筋商店街を北上。そして難波に到着するのがトラムの構想である。

 学生たちは「沿線には多様な魅力があり集客力ある街が点在しているが、それらをつなぐ交通機関がなく人々の回遊性が極めて低くなっている。それを解消するためにもトラムは必要」と、導入目的の観光を活発化させるためにもトラムが必要なことを指摘した。


 大阪におけるトラム事業の採算性はどうか。事業は継続できるのか。

 「運賃を100円均一で運用して、40年間運用しても建設費などを考えると成長性が乏しい、大阪府などの資料では挙げている」として、実際にかかる建設費用など支出と便益を金銭に置き換えて計算してトラム事業は社会に役立つものとはならないといった結果になってしまった」としている。

 しかしトラムは「道路やダムを造るのとは少し様子が違い、街の活性化、観光振興などの目的が大きい」として、今回、学生たちは「トラムが出来ることによって、今後増えるであろう観光客が消費する金額なども含めて考えなければならない」として、必要な9億7800万円の経済効果を算出した。それは観光客1人当たり1日11円の支出が必要となるが 「この数字からトラムが市民に受け入れられる交通機関としての可能性が高いことを証明している」とする。

行政が行ったWebアンケートのうち近畿圏在住の回答者のデータから、トラムが導入された場合の目的地は、なんば、天王寺が80パーセントと過半数を占め、多くは商業施設であった。
 「トラムがあれば利用するが、日本橋、新世界へという回答が少なかったのが気にかかる」として、街作りという魅力ある課題として残るとしている。