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日本橋にトラムを通して賑わいを進める会  ヴァンソン藤井由実さんを招いてフランスのトラム事情を聞く

◆大阪・日本橋にLRT(トラム=新型路面電車)を走らせる計画を進める「日本橋にトラムを通して賑わいを進める会」(会長・蘇建源共立電子産業会長)が、2015年5月13日、フランス在住の日仏異文化マネジメントコンサルタント、ヴァンソン藤井由実さんを招いて、フランス・ストラスブールのトラム事情を聞くタウンミーティングを、大阪市浪速区日本橋4丁目の日本橋筋商店街振興組合会議室で開いた。ヴァンソンさんは、車を町の中心街に入れないパークアンドライドなどのシステムを導入して、トラムが美しい町づくりのツールとなった現状を説明した。

 

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ヴァンソン藤井由実さん


 ヴァンソン藤井由実さんは大阪市出身で1980年代からパリに移り住み、2003年からフランス政府公認の日仏マネージメント研修をヨーロッパ各地の民間企業や公的機関で行っている。
 10年間住み続けるフランス北東部の、ライン川左岸に位置する都市ストラスプールの町でトラムが町に賑わいを取り戻したケースをまとめた「ストラスブールまちづくり・トラムとにぎわいの地方都市」(学芸出版)を著している。

 ストラスブールは人口約28万人の町で、その経済圏人口は約倍の50万人ともいわれている。1994年に10Kmの区間でトラムが開通し、今は総延長40Kmの路線を低床型の最新車両が走っている。

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フランス・ストラスブールのトラム事情を話すヴァンソン藤井由実さん

 フランスでは日本と違って市長が自治体警察の長を兼ねており、認可のたらい回しがない。市長がマニフェストに「トラムを走らせる」と掲げて選挙に当選すると、議会の承認を経て実現するといった仕組みだ。
 そんなストラスブールも日本よりも早い車社会の到来で、1980年代には町の中心部が空洞化して、商店街はさびれてしまっていた。それを解決したのがトラムを中心にした、緑が多いのんびりとコーヒーを飲んだり読書したり、散歩が楽しめる町づくりだった。

 94年のトラム開通に伴って車を中心地から締め出し、車道を歩道やカフェにした。トラムの軌道は緑地化したし、自転車の専用道路も整備され、町の賑わいを取り戻していった。

 日本橋にトラムを走らせる - といった計画を打ち出すと「既存の地下鉄堺筋線が走っているのになぜ、新しい路面電車が要るのか」といった疑問を投げかける人もいる。
 それに対してヴァンソンさんは「ストラスブールの事例のようにトラムは、美しく人々が集い憩える、楽しい町を作るためのツールである。町づくりとトラム事業がひとつになることで成功する」と話した。

 トラムを走らせるのは、人々が憩い、集う、緑いっぱいの町を車から取り戻すための手段なのである。それを実現させるには、町の中心部に車を乗り入れさせないパークアンドライドシステムの導入が欠かせない。
 ストラスブールも町の中心部入口に駐車場を設け、そこからトラムなど公共交通機関で移動するという仕組みを取り入れている。

 

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人々が憩い楽しめる美しい町づくりにトラムは必要というヴァンソン藤井由実さん


 大阪ではトラムと地下鉄、バスなど既存の公共交通機関との乗り継ぎをスムーズにするほか、トラムの運行頻度を高めるなどによって利便性を高める必要があると指摘する。病院や学校、公営住宅などをトラムの路線に組み入れることも利用促進に欠かせないともした。
 「ここで重要なのは駐車料金プラストラムの運賃が、中心部で利用する駐車料金より安くする必要がある」とヴァンソンさん。

 日本橋の商店にはいろんな商品が納品される。その荷捌きについては、町中心部に荷捌き場所を設けて、そこから配送する仕組みを考える必要があるとした。