蘇建源インタビュー(共立電子産業会長) 「小さなユーザーを大切に」
◆大阪・日本橋の電子部品販売会社・共立電子産業は、電気製造に携わる人たちにとっては多かれ少なかれ欠かせない存在である。同社で部品を購入して、製品開発をする人は少なくはないし、日本橋で部品探しが高じて事業を大成させた人もいる。取引メーカーからCPUの勉強を求められて、日本橋へ足を運び部品を学んでビジネスの元を築いた人もいる。そのニーズを満たしてきたのが共立電子産業であった。そして次の段階として新しいユーザーを開拓し、育てることを目的に始めたのが子どもたちをターゲットにした電子工作教室であった。
共立電子産業のユーザーの中には、日本橋を足がかりにして株式上場を果たしたり、規模を拡大していった企業がたくさん存在する。それも同社がジャンク品をはじめ扱いジャンルを特化しない数多くの電子部品を提供し、客のニーズを満たしてきたからである。
ジャンク品販売に見られるように共立電子産業は、部品一点ずつに付加価値を付けて販売するノウハウを確立することで利益率を高め経営の安定化の礎を築いてきた。それによって利益率を高めてきたのだ。
企業やそこに勤める人たちだけではなく、子どもたちも同社にとっては立派なユーザーである。その小さなユーザーを育てることで将来のビックユーザーとして日本橋のファンになってもらおう、と同社が日本橋で始めたのが電子工作教室だった。
今では街の事業として電子工作教室だけではなくロボット教室も継続されている。
そこに集まってくる子どもたちは、教室で自分が使う部品を日本橋にある部品店で買い集めるところから始める。
電子部品の単価は低いから全部買い揃えても数十円といった金額である。店頭では店員が子どもたちの質問に、まるで高額な最新機器を販売するかのように分かりやすく丁寧に説明をして応えている。
「この姿勢が将来、子どもたちが店を助けてくれることになる」と蘇会長は信じて疑わない。
日本橋に多くの部品店が存続しているのも、そうした1人ひとりのユーザーとのつながりを、多くの店が大切にしてきたことがあるからだ。
共立電子産業は創業時のジャンク品販売から、正規部品へと扱いをシフトしてきた。そうした中、部品流通はメーカーとの直接取引から代理店を介したものへと変化する。にも関わらず大きな部品メーカーが直接、同社と取引を続けるケースがあるのは、その売り場での接客姿勢に共鳴する業界人がいるからである。
蘇会長が提案して始めた電子工作教室やロボット教室も、そこで学ぶ子どもたちが日本橋を支えるファンになることをねらったものなのだ。