◆日本橋に次世代型路面電車のLRT(トラム)を走らせて街づくりを進めようとする「日本橋にトラムを通してにぎわいを進める会」(会長・蘇建源共立電子産業相談役)のメンバーなど20人が2016年4月3日、恐竜とそばで有名な福井市を訪ねて、3月27日から路面電車の福井鉄道(本社・福井県越前市)がえちぜん鉄道(本社・福井市)と相互乗り入れを始めている様子を視察した。事業者が違う鉄道と路面電車での路線乗り入れは全国で初めて。
2014年から福井鉄道で運行を開始ている735形車両(福井駅)
ki-boの愛称で親しまれている福井鉄道の新型路面電車
日本橋にトラムを通してにぎわいを進める会は2020年までに日本橋筋を通る難波~天王寺間のトラムの具体化を目指して運動を進めている。路面電車と街づくりに詳しい講師を招いての勉強会や路面電車が走る全国の街づくりの実例の視察などを行っている。
今回は福井の路面電車とまちづくりを考える「ROBAの会」の協力で、福井市内中心部を走る路面電車と郊外から市内に入る鉄道が相互乗り入れをして、街の発展につなげようとしている様子を見学した。
無人駅での乗り方も丁寧に説明している
新型路面電車の運転席 外の様子は液晶ディスプレイに表示されている
福井市内では7年後の北陸新幹線開業に向けて駅前再開発が進んでいる。
一行はその福井駅前から、福井鉄道・えちぜん鉄道共通1日フリーきっぷ(大人1400円)を使って福井鉄道の路面電車に乗車。車窓から見える商店などが建ち並ぶ様子を確認していた。福井駅ではドイツ・シュトゥットガルトから土佐電鉄(現・とさでん交通)が譲り受けたものを最近、福井鉄道が購入して改良した黄色のシャープな車両が目を引いていた。
同市内の田原町で勝山市・坂井市へ向かうえちぜん鉄道の路線に乗り換えた。乗ったのは福井鉄道の黄色のおしゃれな新型車両。線路は単線で窓の外は住宅が多くなり、田畑も見られるのどかな風景が広がっていた。
車内はイエローとグレーのシート、福井名産の笏谷石に見られる青色をイメージした色の床面などおしゃれ感が漂って、乗る人たちを楽しい気分にしてくれている。
ホームの高さの違いが分かる
路面電車の福井鉄道とえちぜん鉄道が乗り入れる駅では、ホームの高さがそれぞれ違う。路面電車の福井鉄道は低いホームを、えちぜん鉄道は高いホームを利用している。従来、路面電車だけが走行していた市街地では、えちぜん鉄道の利用者は車両から出てくる収納式の昇降段を利用して乗り降りしていた。
福井鉄道は福井県内でバス、鉄道を運営しており、福井市内と越前武生を結ぶ路面電車も運行する。福井駅で目にした黄色のシャープな車両は2014年から運行を開始ている735形車両である。えちぜん鉄道は福井県福井市から勝山市、坂井市を結ぶ鉄道路線を運営している。福井市と勝山市などが出資する第三セクター方式の鉄道事業者である。
再開発が進む福井駅前
福井駅前には高層ビルもオープンを控えていた
北陸新幹線の開業を目指しての建設も進められている
このえちぜん鉄道の車掌はアテンダントと呼ばれる女性が担当する。現在12人が乗務しており、目下研修中の新人が加わると13人になるという。第三セクター鉄道の多くがそうであるように、沿線の観光地の各駅にはレンタサイクルを用意するなど、ここも乗客獲得に新たな工夫と取り組みを見せている。
福井鉄道とえちぜん鉄道の相互乗り入れは郊外と市街地の結びつきをより強めて街づくりを発展させることになる。また開通が待たれる北陸新幹線でやって来る人たちを、福井駅から県内各地の観光地へと運ぶ重要な足となることはまちがいなさそうだ。
駅舎も木を生かして新しく建てられた (田原町駅)
日本橋にトラムを通してにぎわいを進める会 路面電車と鉄道が相互乗り入れした福井鉄道とえちぜん鉄道の現状を視察