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新・デジタリアンの散歩道

デジタリアンが取材したデジタルなニュースをお届けしています。

インタビュー 蘇建源共立電子産業会長 第3回

ジャンクの王様 商売は目利きと付加価値

 ジャンクで肝心なのが仕入れの目利きやねん。
 共立電子産業の蘇建源会長はそう言い切る。
 他人にはゴミに見えるものでも、ちょっと見方を変えると宝物になってしまう。それを蘇さんは創業当時から実践してきた。ジャンク品も仕入れたままで売っていたのでは儲けにはならない。1個50円で仕入れて100円で売っているのが、それまでのジャンク屋で、蘇さんはそれに付加価値を付けて販売することで利益を増やしてきた。

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共立電子産業・蘇建源会長

 「いつもええジャンクが出てくるとは限らへん。僕は他人がよう触らんようなものを仕入れることにしてきたんや。回路がちょっと複雑なもんであったり、基盤に乗っているパーツが半導体だったりするようなものを買うてきて半導体をばらして、トランジスターやダイオードをチェックして良品だけを残して、あとはほってまうんや」

 それだけではまだ足りない。一つひとつの商品に情報を添えることにした。

 「トランスやったら電流容量、1次側入力電圧100Vなど極性を書くんやわ。そうすることで安心して買ってくれます。しかも高く売れる。トランスなんか1個50円で買うてきて、普通なら100円程度でしか売れへん。しかも買う人は何十個単位で買うていく。1個手間かけて調べて説明を添えたらたら、あとの商品すべて同じように売れる。そうすることで50円のものが200円、300円と売れるんやんか」

 それが商品情報という付加価値である。
 ところがそれ以前のジャンク屋は50円のものを100円で売って「安いやろう」というやり方だった。

 「お客さんは見当を付けて買いはるけれどなぁ、それでは不安になるんや。でもそんな見当付けられる人は少ない」
 そこで蘇さんは誰でもが安心して買えるように回路図を付けて販売した。電子回路でも読めるものは読んで回路図を付けた。高周波増幅器やったらチューナーの増幅器に使えますと書いた。そのように説明を書いて付けると、安心してもらえ、高く売れた。客も添付された説明書きを読んで品選びするのが面白い、と言って店に長居してくれるようになった。それが客単価のアップにつながったのである。

 ジャンク販売もやればやるほどに目が肥えてくる。売るコツも分かるようになってきて、売上も伸びてきた。しかし1人で仕入れをするのだから、さらに販売を伸ばすには追い付かなくなってきた。創業して5年ほどは、店は僕と手伝ってくれていた知人の2人だけだった。もちろん仕入れは蘇さんの仕事である。その目利きが決め手であるから、売れているからといって一気に仕入れを増やすことはできなかったのだ。
 ジャンク品の仕入れ先は専ら解体業者だった。そこへ自ら足を運んで商品を探しもしたが、ほとんどが業者からの持ち込みだった。東京から持ってやって来るケースもあった。その持ち込みの中から良品を選んで買い取るわけである。

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共立電子産業・デジット

 こんなことがあった。
 「ある業者が持ち込んだ品に通電したら、それはACのコントローラーやったんです。トランスの代わりに使えるんですわ。1個10円程度で仕入れました。それの回路を調べて配線を作り変えて、白熱球の調光に使うライティングコントローラに作り変えて売ったら、200円か300円で売れたんです。それにボリューム1個を付けて、配線すると半田コテの温度調節に使えた。それはもっと高く売れましたね」
 解体品の中は宝が眠っている。それが玉になって光り輝くか、ゴミとして持ち帰らすか、仕入れは目利きによって左右される。
 蘇さんが解体屋に行くと、しばしばアマチュア無線が好きに人たちと顔を合わせた。同じように宝を探しに来ているのである。顔なじみになると「蘇さん、どこどこの店でこんなん出ていたで」と商品情報を教えてくれる。
 「そんな人たちと仲良くしておくと、仕入情報が入ってくるんですわ」

 蘇さんは他人が見るとクズに見えるものの中から光るものを探し出し、それに価値を付けることが好きなのである。いっちょうかみの精神は、こんなところから育まれたのかもしれない。

ジャンク専門店デジット誕生

 「ジャンク言うたらアカンもんというイメージがありますが、でもちょっとした工夫を凝らした配慮をすることで、安心して高く買ってもらえます」
 蘇さんが築いたその売り方は共立電子産業の伝統として今も続いている。
たとえばコンデンサなどはいろんな容量や電圧の商品がひとつのケースの中にごちゃごちゃに混ざって売られている。
 共立電子産業の創業時から「部品をひと山なんぼで買うてきて、山で売ることはせえへんかったんや」という。ちゃんと説明して安心して買えるようにして売るというのを信念にしているからだ。
 ある時一つひとつ商品を選んでいた客が、選ぶのが面倒臭くさくなって「もう、これ全部買うわ」と叫んだことがあった。
 「いろんな種類が入っていて。お客さんが必要な物を探しに来られるから、要るもんだけ買うて、と言って断ったんですわ」
 今では笑い話だが忘れられないエピソードとして、時折飛び出すことがある。

 ジャンク品の難点は数ある商品の中には不良品が含まれていることがある。半導体が部品の主流になってくると、ジャンク品の信頼性が徐々に低下していった。
 「トランジスターぐらいまでならば分かりやすいけれども、アナログのテスターで調べると良品か不良品かは調べることはできた。ところがICになるとテスターで分かりにくい。ICはより信頼性が求められるので、ICを売り出した頃にはジャンクはもう見切らなあかんなぁ、と考えるようになった」

 そこで半導体売り場とジャンク売り場を別けることにした。
 最初はシリコンハウスの店舗の中で売り場を別けていたが「同じ店でジャンクと並んで新品売ってたら、やっぱりジャンクの店ということになる」ことから、1985年頃にジャンクの専門店「デジット」と新品だけを扱う「シリコンハウス」に店舗を別けた。(続く)