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ヴァンソン藤井由実さん  大阪・日本橋でLRT導入をテーマに意見交換会  LRTは街の景観を再生する

◆フランスの都市交通政策に詳しいヴァンソン藤井由実さんが、このほど大阪・日本橋日本橋筋商店街振興組合の会議室で、次世代路面電車システム・LRTの普及が進む仏・ストラスブールの事例を元に講演し、LRT導入を計画する日本橋の人たちと問題点などについて意見を交わした。

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仏・ストラスブールの事例を紹介しながらLRT導入について話す
ヴァンソン藤井由実さん

 LRT導入には住民の同意が欠かせないー。

 ヴァンソン藤井さんは参加者を前にそう言い切った。
新しい事業を進める段階では必ず反対派の存在は付き物であるが、まったく新たなLRTを導入するような場合にはなおさらである。
 そうした点にヴァンソン藤井さんは「すでに導入している先進地域の事例を反対派の人たちに見てもらうのが良策」と指摘するとともに「導入に失敗したケースからその原因を学んでおくことも大切」とも助言した。

 昭和時代には路面電車も走っていた日本橋筋ではあるが、それが廃止されて久しい。代わって地下鉄が道路の下を走る。それで十分じゃないか。当然、そんな意見も出てくる。

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路面電車とLRTの違い


 ヴァンソン藤井さんが見続けているフランス・ストラスブールのLRTは21年前に導入されているが、その一番の導入目的は「街の景観を再生することだった」という。
 道路は車に占有され、人が街歩きを愉しむ環境ではなかったようだ。しかしLRTを走らせるで、車を少なくして、街にうるおいと賑わいをもたらせることにつながる、と市長みずから旗を振って導入が進められた。

 今の日本橋も中央の広い道路は車のものであり、歩道は走る自転車の恐怖を感じながら歩かなければいけない。
 LRTはそうした一昔前の状況を改善してくれるようだ。

 ストラスブールでは大型駐車場を街の入り口に設けて、街に入るにはLRTを利用するパークアンドライド方式が採用されている。これによって車の乗り入れが規制され、歩行者専用道路や自転車専用道路も整備され、街は人々の回遊性がぐんと高まった。

 電車の軌道は緑化することで、街並みの美化にもつなげているし、街灯、駅名標識、ゴミ箱などのデザインを統一化して、美しさとともに初めて街に訪れた人にも分かりやすいサービスを提供されている。

 もちろんいいことばかりではない。LRTを導入する工事の間、商店街の店舗は来店客が減少するかもしれない。それをフランスでは売上の減額損を店舗が申告することによって、市が補填することで解消されている。LRT導入のための行政側による施策の整備も欠かせないようだ。

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LRTには人優先のさまざまな工夫が見られる

 地下鉄と違ってゆっくりと走る路面電車は車窓から街の景色を楽しむことができる。「あっ!こんなお店が出来たんや」など、新たな発見もある。暗闇の中を走る地下鉄では決して味わえない楽しみのひとつでもある。

 参加者から出された質問にヴァンソン藤井さんは「これが単にかけ離れた外国の都市の事例として受け止めるのではなく、自分たちの街に置き換えて考えていくことが大切。LRTの導入をひとつのきっかけとして、暮らしやすい街、歩いていて楽しい街、そして美しい街並みを取り戻すことにつなげてほしい」と話していた。